インド政府は、約100年ぶりに、すべてのカーストを対象とした全国的な人口調査を実施している [1]

この取り組みは極めて重要である。なぜなら、得られたデータが、国の教育機関や連邦政府の公職における、社会的弱者のための保護枠である「予約制度(リザベーション)」の拡大を決定づけるからだ。政府は社会的な格差を数値化することで、歴史的な不平等を解消するための政策を導入することを目指している。

2024年に開始された今回の人口調査は [2]、14億4,100万人の人口を対象としたデータ収集における大きな転換点となる [3]。前回の調査から15年の空白期間を経ての実施となる [4]。インド人口調査局長は、すべての州と地域を包括的にカバーするため、デジタル化されたデータ収集を活用していると述べた [5]

この動きを支持する人々は、データこそが社会正義に不可欠であると主張する。日本経済新聞のニューデリー・ベンガルール支局長である岩崎聡氏は、過去の差別の清算には、カースト制度の実態を把握することが不可欠であると指摘した [6]。また、社会学者の橋爪大三郎氏は、インドを理解しようとする際、カースト制度を無視することはできないと述べた [7]

しかし、この動きは国の社会構造の将来に関する議論を巻き起こしている。批判的な人々は、カーストに基づく割当枠の拡大は能力主義(メリトクラシー)に逆行し、社会的分断を深める可能性があると示唆している。カースト制度が依然として平等への硬直的な障壁となっているとする報告がある一方で、Suzukiの製造工場などの企業環境では、共有スペースにおいて従業員がこうした障壁を打ち破っている事例も見られる [8]

政府はデジタル記録を用いて、代表性の具体的な欠如を特定し、それに応じて連邦政策を調整する意向だ。このプロセスは、差別に関する逸話的な証拠を超え、データに基づいた社会工学的アプローチへの移行を目指している [5]

過去の差別の清算には、カースト制度の実態を把握することが不可欠である。

国家規模でカーストを数値化するという決定は、積極的な社会的再分配への転換を意味する。約1世紀前のデータを更新することで、インドは現在の人口統計学的現実に合わせて「予約制度」を近代化しようとしている。しかし、カーストに基づく公平性と能力に基づく昇進との間の緊張は、インドの政治・社会生活における主要な断層であり続けており、人口調査の結果が、限られた公共資源の分配を巡る新たな法的・社会的紛争を引き起こす可能性がある。