物理学者たちが、「閉じた時間的曲線(closed timelike curves)」を通じて、限定的な量子情報を過去に送信できることを示す数学的モデルを開発した [1, 2]。

この理論的な突破口は、一般相対性理論と量子力学の間に長年存在していた矛盾を解消するものである。「親殺しのパラドックス」のような因果律のパラドックスを引き起こさずに情報が過去へ移動できるかを判断することで、宇宙の根本的な法則に関する新たな理解が得られる可能性がある [1, 2]。

研究を主導したのはMITのSeth Lloyd博士で、メリーランド大学およびその他の研究機関の研究者と共同で取り組んだ [1, 2]。チームは、量子力学が因果律を維持したままデータの過去への移動を許容するかどうかに焦点を当てた [1, 2]。

Lloyd博士は、「我々の結果は、因果律を損なうことなく量子情報を過去に送信できることを示している」と述べた [1]

2023年3月に発表されたこの研究 [2] によれば、この旅が可能なデータ量は極めて限定的であるという。モデルに基づくと、1つの閉じた時間的曲線あたりに過去へ送信できる最大情報量は1量子ビット(qubit)であり、これは古典的な情報の1ビットにほぼ相当する [1]

この制限こそが、古典的なパラドックスを回避するためのモデルの核心となっている [2]。一部の報告では古典的なメッセージの送信が可能であると唆唆されているが、他の分析では、任意の古典的メッセージではなく、単一の量子ビットのみが送信可能であると指摘している [1, 2]。

この理論研究は米国のMITおよびメリーランド大学で実施された [1, 2]。今回の知見は、物理法則が、出来事のタイムラインを破壊しない非常に限定的かつ特殊な形式の「逆因果律(retrocausality)」を許容している可能性を示唆している [1, 2]。

「我々の結果は、因果律を損なうことなく量子情報を過去に送信できることを示している」

この研究は、過去への論理的矛盾を回避するメカニズムを提案することで、タイムトラベルに関する議論をサイエンス・フィクションから理論量子物理学の領域へと移行させた。単一の量子ビットの送信は通信としては実質的に無視できる量だが、理論的な可能性が示されたことで、時間の矢は量子力学の法則下において、これまで考えられていたよりも柔軟である可能性が浮上した。